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ワン・ラスト・ソング/サム・スミス(One Last Song/Sam Smith)

ロックの衰退という言葉をよく耳にしますが、僕の感覚や生徒さんの嗜好からは、多様性やポップ性は一層強く意識されたスタイルに変化しているものの、まだまだロックは主流だといえます。
しかし、20年前と比べると、ソウル・R&Bなどのブラックミュージック系を歌う生徒さんは残念ながらほとんど居なくなり、アニソンやポップアイドルの歌を好む生徒が増えた印象です。
時代の流れといえばそれまでですが、ソウル・R&Bなどのブラックミュージック系のボーカルは、高度な技術を要することが多いですので、願わくは聴いて練習してほしいジャンルといえます。

ブルー・アイド・ソウルな逸品「ワン・ラスト・ソング」

さて、今回紹介する曲「ワン・ラスト・ソング」は、イギリス出身のアーティスト、サム・スミスが2017年にリリースした楽曲で、2枚目のスタジオアルバムとなる「The Thrill of It All」に収録され、アルバムからセカンドシングルとしてもリリースされたゴスペルテイストの効いたブルー・アイド・ソウル(blue-eyed soul)な逸品。

自らの報われなかった愛を基に創作されたとされ、愛した人へこの想いが届いてほしいと願う、最後のラブソングと解釈できる作品です。

サム・スミスの感情溢れるソウルフルな歌唱はもちろんですが、ゴスペルチックで叙情的なコーラスワーク、小気味よく輝きを与えるピアノ、グルーヴィンなホーン&リズムセクションといったオールドなサウンドが、じつに心地よい楽曲です。

YouTubeで検索https://www.youtube.com/watch?v=7AXo-bYGXI4

オマージュが秀逸なPV

気づいた人もいると思いますが、このPV(プロモーションビデオ)は、じつに意味深で興味深い映像です。
このPVはマイケル・キートンが主演した映画「バードマン」(無知がもたらす予期せぬ奇跡)をオマージュしていると思われるのです。

映画「バードマン」のあらすじは、かつてバードマンというヒーローを演じて人気を博した俳優が、時が流れて落ち目となってからも、過去の栄光やプライドに囚われる自らの葛藤や怒り、悲哀、決心を描いた作品。

映画「バードマン」
(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

僕も実際に観覧した映画ですが、「ワン・ラスト・ソング」のPVが「バードマン」のクライマックスと同じように劇場内を舞台にしていることや、また「ワン・ラスト・ソング」で歌われる、報われることのない愛と知りながらもキラキラしていた過去の一途な愛への慈しみや渇望、悲哀や決心などの複雑な想いを、「バードマン」のストーリーや主人公の想いに重ねてオマージュされたと読み取ることが出来ます。

「ワン・ラスト・ソング」PVhttps://www.youtube.com/watch?v=7AXo-bYGXI4

PVも映画「バードマン」のエンディングように意味深で、最後は屋上へと足を運ぶわけですが、単純に「ワン・ラスト・ソング」=最後に一曲、という潔いタイトルに収まらない、人の不器用さや裏腹な感情など、その心理が複雑であると痛いほどわかるわけです。

映画「バードマン」を知るものにとっては、PVという短時間の映像に多くの心情を盛り込む術として上手くオマージュを活用したと感心しますし、あらためて映画「バードマン」の秀逸さにも気づかされる、良くできた映像だと思います。

「ワン・ラスト・ソング」収録の2ndアルバムは全英・全米ともに1位を記録、多くのメディアに賞賛された1枚

幼少期からアレサ・フランクリンホイットニー・ヒューストンといったR&B/ソウルシンガーに感銘を受け、ボーカルレッスンに通ったというサム・スミス。
父親は、息子がクラブツアーできるようなジャズシンガーになることを望んで、熱心にレッスンの送り迎えの車中でも練習させたといいますが、サム・スミス自身はアリーナを満員にできるようなビッグアーティストを目指していたと言います。

その努力は実り、デビューするや否や、1stアルバム「In the Lonely Hour」は母国イギリスで1位を獲得するヒットを記録。
世界のメディアから賛辞を受け、米国では最も早く売れた英国人とまで言われ、グラミーアワードの「最優秀ポップボーカルアルバム賞」を受賞しました。

そして、「ワン・ラスト・ソング」が収録された2ndアルバム「The Thrill of It All」では作品やボーカルに更に磨きがかかり、1stアルバム同様にビッグセールスをあげると、全英・全米ともに1位を獲得する快挙を達成。

音楽出版メディアであるローリングストーン誌のレビューでは「2ndアルバムは更に歌唱技術が向上し、性別にとらわれない壮大な声をパワーアップさせた作品になった。サム・スミスは同世代で最も強力で、最も表現力豊かなボーカリストの1人。」と紹介され、New Musical Express社のニック・レヴィンは、サム・スミスとアデルを比較し、アデルのアルバム「25」と同様に、アルバム「The Thrill of It All」は間違いなく完成度の高いアルバムと言わしめました。

Sam Smith / Album-The Thrill of It All
2ndアルバム「The Thrill of It All」

アデルの2015年のアルバム「25」は、ご存知のように、アデルが25歳の時にリリースされた作品。
サム・スミスが本格的に音楽業界に入るきっかけも、ジャズクラブで歌っていた頃に、アデルのマネージャーに声をかけてもらえたことだといいますが、奇しくも、紹介の曲サム・スミスの「ワン・ラスト・ソング」が収録された2ndアルバム「The Thrill of It All」のリリースもサム・スミスが25歳のときの作品です。

高い声ばかりを望んで練習するだけでは、豊かな声のサウンドや表現力を作ることはできないので、中・低音部も練習しましょうと生徒さんに伝えることですが、サム・スミスも2ndアルバム発表までのオフの間はビールも嗜むなど神経質になりすぎずにリラックスして過ごし、また、喉の負担を考えて無理に高い声を出しすぎずに低い声や扱いやすい音域での練習も心掛けたとも言い、結果、それが声・表現力のパワーアップを引き出し、ボーカルのスキルアップに繋がったと語っています。2ndアルバムはサム・スミスが幼少期に感銘を受けたソウル・R&Bテイストの色合いを打ち出す作品が多いですから、ある意味、楽器のように繊細に奏でるということよりも、もっとエモーショナルにソウルフルな歌唱を作るためには、これは良い選択、意識だったと思いますね。

一般に皆さんが抱いているサム・スミスのイメージは、ラブソングを悲哀に浸り、優しくしっとりと歌うような印象をお持ちではないでしょうか。
「ワン・ラスト・ソング」では、幼少期に感銘を受けた自らのバックボーンであるソウル・R&Bテイストのサウンドが呼び水となり、その歌唱はエモーショナルでパッションに満ち溢れ、超人的歌唱をみせるライアン・ショウ(Ryan Shaw)やアダム・ランバートを彷彿とさせてくれます。耳の肥えた皆さんにこそ、ぜひともおすすめしたい作品です。

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この記事を書いた人

歌手輩出実績多数 / 初心者大歓迎 /
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ボイストレーニングスクールのトップノート

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